Update:2015.03.23[Mon]Category : SURF

日本のビーチの砂がもっと白かったなら…

 photo by Brian Shamblen

3月末にもなると気候も春めいて桜、桃などの〝春色”があちこちに咲き始める。ますます気分も高まり、抑え気味だったおしゃれゴゴロも一気に開花する。さて、今年はどんな夏になるのだろう。

昨年の夏、ファッションではアメリカンスタイルが大ブームだった。

雑誌は軒並みカリフォルニア的ビーチスタイルが流行。街でも白いパンツにブルーのトップスをアクセントにウェリントンかボストン型のサングラス、そして足元はキャンバススニーカーやスリッポン。すでに定着しているパンケーキやスウィーツなどのハワイアンのブームもさらに加速して、外資系のビーチをイメージしたブランドやショップの人気も相まって、雑誌は軒並みカリフォルニアやブルックリン、サンフランシスコカフェブームにハワイアンなどなど、とにかくアメリカンなビーチスタイルの風が吹いていた。

さて今年。日本でのビーチスタイルファッションは、まだまだ吹き続ける気配だ。

一方で、本当の海に目を移してみると、関東では湘南海岸の飲酒や音楽が規制強化されたことや山とキャンプの大流行もあって、「実際のビーチ」は大流行とはならなかった。日本の海岸はファッションとは裏腹に、ジャパニーズ・ビーチはなかなか観光としての産業が発展する様相はない。

かの有名な世界屈指のビーチリゾート、ワイキキビーチは誰もが知る場所だが、あのビーチは実は人工ビーチであることをご存じだろうか。

すでに行ったことのある人ならば、真っ青な空にターコイズの海、暑いのにまるで湿気を感じない心地よい風。そして裸足で歩けば気持ちのよいほんのりベージュな砂浜のワイキキに、ファンも多いことだろう。日本でのハワイ旅行ブームはここ数年で完全復活し、日本人渡航者数も堅調に伸びているという。

さて今日の本題。日本のビーチの砂が白かったなら…。

アメリカ政府の調査によれば、世界の海岸線の長さをあわせると35万6000km。そのなかで日本の海岸線は2万9751km。世界的にみれば第6位の長さを誇り、あの大国アメリカの海岸線は世界9位、オーストラリアが7位というから世界地図では小さな小さな日本も、複雑な形をした海岸線もあいまって世界有数の海洋国であるといえる。

そんな日本の砂浜は地域によって変化に富み様々な砂があると言われている。沖縄などの南の珊瑚生息地域は、サンゴが石灰質化して白く見えているため、まぶしいほどに白い砂と真っ青なブルーの海が美しい。だが、それ以外の本土でよく見られる黒っぽい砂は、基本的には火山や地震に表される変動の激しい土地ゆえに、火山で噴火した際に流れ出た溶岩、河川から流れてきた土砂や岩盤や石などが波や風にさらされ細かく砕け黒くなっている。

だから多くの日本の海岸は白い砂浜とはゆかず、そんな雰囲気もあってか、ファッションではなく「実際のビーチ」は、ハワイやカリフォルニア、ビーチアイランドのようなリゾート感がなく、またはサーフィンなどに代表されるビーチスポーツやレジャーが発展しにくい地理的、国土的要因がある。つまり、カリフォルニアスタイル、ハワイアンスタイルといったファッションカルチャーが、ここ日本の場合はアウトプットしにくいともいえるのだ。

さて、ハワイのワイキキビーチ。前述のように人と手によって作られた人工ビーチである。
 photo by FHKE

ワイキキの「wai」は水を意味し、「kiki」は湧き出るところを意味した。ワイキキは、その名が示す通りに沼地からなる湿地帯で、1892年にはワイキキで500エーカーを超える稲作水田が耕作されていたのだという。しかし白人資本家たちによる観光開発によって「モアナ・ホテル」が建設されたのを皮切りに、ピンクのホテルで有名な「ロイヤルハワイアン」などの開発も行われ、のちに湿地帯の悪条件を緩和する対策として埋め立てが開始された。

Photo by  Jennifer Boyer

海岸には島の北部やカリフォルニアから砂を輸送し敷き詰め、今のワイキキビーチの美しい砂の海岸が出来上がった。そして今も海岸保全のために、カリフォルニアやオーストラリアからも砂が運ばれている。そう。つまりワイキキビーチの美しさは自然の産物、というわけではなく、かなり人間が手を入れて作った観光・産業のための場所ということになる。それが結果的にハワイ州のの富となっている事もある一方で、当時のネイティブハワイアンが土地を追われるなどの弊害もあった。だがこうして多くのプロフィットが生まれた今。そのような資本家や国の政策があってこその”ワイキキ”なのである。

日本のビーチがもっと白かったならば、日本の観光産業やビーチカルチャーはもっと発展していたのだろうか?

日本の海岸は地元の漁業も含め独自に産業発展はしてはいるが、アメリカに代表されるような、いわゆる”ビーチ観光産業やカルチャー”は独自発展することがなかなかできず、結果的に輸入品となってしまう。しかしそれは、日本の海岸が自然の災害を受けやすい地理にあること、火山列島ゆえの黒い砂で構成されていることもまた、その一因でもあろうと思う。

日本が世界第6位の海岸線の長さを持ちながらも、観光やファッションとは違う次元で、海は恐ろしくも、ある意味で神々しい、畏敬の念をもって接する”神的存在”としてあるからなのかもしれない。

 photo by GO IZUMIKAWA at shonan beach,JAPAN

そんなわけで今年の夏。

ファッションの世界ではアメリカンなビーチファッションの風がまた吹くのだろうが、日本のリアルな「ビーチ」に潮風を感じに行くのもまた素敵! ではないだろうか。

●出展
一般財団法人国土技術研究センター
http://www.jice.or.jp/quiz/kaisetsu_04.html

山中速人 観光ハワイの誕生~ワイキキの一世紀~『季刊民族学』97号
http://www.asahi-net.or.jp/~cr1h-ymnk/01-8-2.html

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田中 菜穂子 / BLUER 代表

田中 菜穂子 / BLUER 代表

BLUER代表。雑誌「サーフィンライフ」編集者を経てITに長年従事。2014年よりITメディアとプロダクトを融合させたアウトドアブランド「BLUER」を創設。

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