車泊の旅へ。
渡辺忠夫|バッググラウンドストーリー

Words and Photos by Naoko Tanaka , BLUER EDITOR


渡辺忠夫。
カーヴィンダイレクト。株式会社マルコーエンタープライズ社長。

プロサーファー北村吉代氏と「車泊」を企画しはじめたときに、旅の”お宿”である「車」はどうする? というのが、もっぱらの課題だった。

当時、北村プロは10年選手の20万キロ越えのハイエースを愛用していて、職業がプロロングボーダーであることからして、車種がハイエースであり車を酷使していることに何も驚きはなかった。

そうこうしているうちに、本格的に「車泊」企画をやって行こうという話になり、ハイエースも新調して、内装からドキュメンタリーで読者の皆さんに見ていただこうということになった。*参照


時は春。

冬が終わりをつげ春の到来とともに、車業界もアウトドア業界も一斉に展示会やイベントを仕掛けはじめていた。

そんなとき、ハイエースの内装を一手に引き受けてくれる会社はないかと、内装における日本有数の会社をまわり、この企画を持ちかけた。

「BLUERというアウトドアのメディアをやっています。(中略)ハイエースを新調し、内装にベッドキットを搭載したいんですが、「車泊」という提案をしていくこととなり、内装キットをご提供いただきたいのですが…」。

この提案をもちかけた1社目のメーカーでは、木っ端微塵に、提案は打ち砕かれた。

「おたくとやってもね。費用対効果がわからないから、、、内装も金銭的に安くないからね。虫除けネット1つだったら、提供できますけどね…」。

車の内装は決して安くはない。凝れば凝るほどに、お金はかかるから、こんな回答をしてきたメーカーに対しては、至極まっとうな答えだとも思っていた。しかし、この企画を理解してくれる会社は絶対にあるのだと、何処にも根拠はないが自信だけを携え、カーヴィンダイレクトの門を叩いた。

カーヴィンダイレクトの渡辺社長に初めて会ったのは、とある車の展示会の会場だった。

幕張で行われる日本では指折りの車のビッグイベント会場である。しかし、特にカスタムカーのエリアとは、なんとも独特なことか。その雰囲気に圧倒され飲み込まれそうになっていた。

北村プロは、ハイエースに長年乗っているが、”カーヴィン”のベッドをずっと愛用しているという。何はともあれ、「車泊」にもっとも重要なベッドだけは、”カーヴィン”にこだわりがあるというのだ。

その北村プロのこだわりを胸にブースに近づくと、ツートンカラーのレトロなワーゲンバスが停まっている。ここは異空間なのだろうか? 車にはベッドキットにサーフボードが積んである。ブースにいるスタッフの方に、ほんの30秒だけ概略をつげたら、ちょっと社長を呼んできますね、、と機転のきく対応をいただき、そこに登場したのが渡辺氏だった。

BLUERという媒体で「車泊」という企画をやっていくのだと、ほんの5分〜10分だったろうか、お話させていただいたら、「ぜひ協力させてもらいます」という即答が返ってきた。

「サーフィン」という共通項の”シンパシー”がそうさせたのか? または私の熱意を察知してくださったかはわからない。とにかく一緒にやっていきましょう、という気持ちのよい、社長ならではの”即決”をしてくださったあの日は、今でも嬉しく感動的な一日として覚えている。

カーヴィン。それは渡辺社長が自身の父上から引き継いだマルコーエンタープライズという会社で新たに始めた事業体だという。

15年前の当時、サーファーが「車泊」している姿を目にし、木工業を営んでいた会社で、車のベッドキットをサーファーの皆さんに提供することができたら素晴しい、と思い立ち、渡辺社長はそのときから、ハイエースのベッドキットを、来る日も来る日も研究を重ね、知人のサーフショップでモニタリングしてもらい、サーファーからのフィードバックを得ながら、この車で寝るためのベッドを改良しつづけてきたという。

奇しくも、この初期のカーヴィンモデルを購入し、長年にわたり愛用していたのが、北村プロであった。


桜満開の春。

新調したハイエースが届いた。いよいよカーヴィンのベッドを設置する日が来た。

北村プロの初期モデルだけを見てきたから、15年の歳月を経てベッドキットが改良を積み重ね、いまの「最高のクオリティ」に変貌を遂げていたことは、容易に分かった。

当時なかった木製のフロアボードは防水の役割も果たすために、水を使うアウトドアユース・フィッシャーマン、またその木製という安定感から自転車・バイクなど、重い用具を搭載するシチュエーションにも対応できるようになり、簡易に組み立てられるようになるなど、カーヴィン製品はアイテムも増えていた。

またメインのベッドも、寝心地は硬くもなく柔らか過ぎず、そのクッション性や素材、微にいり細にわたり、こだわりぬいた末の”ベスト”がそこにはあった。

ベッドキット、フロアボードにサイドカーテン、リアハンガーなど、内装が完了したハイエースは、まさに渡辺社長の魂の鼓動が刻まれていた。

今、こうして空前の車のカスタム、内装のブームの時代を迎えてはいるが、他に複数あるベッドキットの中において、どこよりも使い心地のよい製品に仕上がっていることは、まぎれもない事実であろう。

当の渡辺社長。そのたたずまいは、決して多くを語らない人柄。

自らが率先してBLUERハイエース号にカーヴィン製品を組み立て作業を行っていく姿は、はじめて面会が実現したイベント会場でも感じた「寡黙だが、真摯なる職人の気質」を感じずにはいられなかった。

しかし一体、何がそこまでそうさせるのか?

渡辺社長もまた、車で過ごす”究極に豊かな体験”を「ベッドキット」という形で表現し、発信しているのだと感じた。

いまでこそ、メディアであるBLUERが「車泊」として可視化表現しはじめたが、「ベッドキット」はその究極のスタイルを15年も前から提案しているのだ。

使い手の感動を知っているからこそ、その感動をひとりでも多くの人に伝える作業を、ずっとつづけている。

それが今、この時代において長年のユーザーであった北村プロと、作り手である渡辺社長が繋がり、究極の旅を提案する発信仲間となった。

熱き想いと職人魂がつまったベッドキット。他の内装メーカーが大きく展開するような、豊富な種類のアイテムはない。

そこには、必要最低限の、「車の中で寝る為の道具」と、ベッドを支えるために設置したサイドボックスが収納の役割を果たし、その産物を突き詰めている。そしてフロアボード、そして、物をかける、わずか1種類のハンガーと。

これがあれば十分、という厳選されたアイテムは、こだわりの職人だからこその結果であろう。

カーヴィンのベッドにあるスピリッツ。

良いものだけを追究する職人のソウルをBLUERは応援し、フォローしていこうと思う。

そして、今年は、この記事を最後まで読み進めてくださった皆さまに、ぜひこの熱き感動のアイテムとともに、「車泊の旅へ」ぜひ出かけてほしいと思う。


*参照:車泊空間ができるまで
http://www.bluer.co/surfingnews/?p=39161

取材協力:カーヴィンダイレクト
http://carvin.jp