words by Naoko Tanaka (BLUER EDITOR)
Photograph by J.deb

柴犬LaniとMooさんがBLUER号で旅する「車泊の旅へ」という企画がはじまって3年目になる今、あらためて「車泊の旅」とは何だろうと考えている。

文字通り、車に泊まって旅をすること。

宿泊施設に泊まらず「移動する自宅」のような感覚は金銭負担も少なく自己欲求を満たし、世界の情勢が不安なこの時代に海外ではなく日本を見直せる。旅人が愛犬を連れて旅をするのはペットが家族の一員となり核家族化している世相も反映して、今までにない新しい旅のように思えて、企画をスタートさせた。

だが2年たっても「私も車泊したい」という人はなかなかいない。

いくら自分の思いどおりの空間が作れたとしても、高級なキャンピングカーでもないのだから、その中で寝泊りするのは過酷。夏は暑いし冬は極寒。レジャー化するはずもない。

当初「BLUER」は、この企画を始めたタイミングで、メディアとしての方向性を完全にチェンジし「車泊の旅」を「BLUERの旅」つまり、BLUERが言いたいことを代弁する企画にしようとプロジェクトが発足した。

雑誌とかメディアというのは、基本的には広告主が売りたいものを媒体が宣伝・代弁するかわりに収益を得て事業としてバランスさせている。だから基本的には広告が多くなったり、雑誌の特集は(そればかりではないけれど)世の中の流行りを宣伝することになる。
でも、BLUERはむしろ、流行や操作された情報を発信するのも追うのもやめて、まだ顕在化していない価値や、幸せを探求する企画にしようと広告を主とする事業形態をやめた。

おかげでBLUERは既定路線ではない。「車泊の旅」も、どうなっていくかわからないドキュメンタリーそのものだ。

そして3年目の今年。

私自身、知らなかった山口県にあるという青い海の存在を、どうしても旅人のMoo kitamuraさんが自分の目で見てみたいということで「コバルトブルーを探して!」そんなタイトルを携えて、Mooさんと柴犬のLaniさんは、旅に出発した。

1か月弱。現地で何が起こったか、詳しいことは当人たちにしかわからないし、あえて連絡もとらない。今回の旅を終え、Mooさんから旅の話を聞き、また自分の心境の変化もあり、本来はすぐに特集を組むこともできたが、このコバルトブルーの旅を咀嚼することが重要だと感じ、このプロローグを書くに至った。

「車泊の旅」つまりBLUERは、この旅によって、ひとつまた新しい次元に突入したのだと感じた。

Mooさんが旅を終えて、こんなことを言い出した。
「高速道路は早く行けるからいいけど、下道で時間がかって人や建物や風景が目に入るから疲れるんだけど、長くダラダラ行く方が、何かが見つかるね!」。

〝うんうん。そりゃそうだよ下道ってそういうものだからね”。
でも、それは深い言葉でしかない。外に出る(=アウトドア)というのは、つまり、見つけること、探すこと。人に逢い、建物、土地、歴史を知ること。体験して感動すること。

旅で刺激を得る人もいれば安らぎを得る人もいるのだろうが、まだ見ぬ価値を記事にする使命をもって「車泊の旅」は生まれたのではないか。今はそんな気持ちでいっぱい。

酷寒と暑さの中で究極に過酷なことを体を張って体験し、だからこそ100倍も感動を味わっているLani&Mooさん。うらやましいけれど、それは当たり前のようにできることでもない。
今までも、今日も、明日もふたりには感謝しかない。

「車泊したいね」という声が溢れるの日。きっと、その感動がたくさんの人に伝わる日であることを信じている。
「車泊の旅」は今日も、その旅の真っ只中にある。

田中 菜穂子 / BLUER 代表

田中 菜穂子 / BLUER 代表

BLUER代表。雑誌「サーフィンライフ」編集者を経てITに長年従事。2014年よりITメディアとプロダクトを融合させたアウトドアブランド「BLUER」を創設。